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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.91 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

都市景観を語る言葉 (22)ヒューマン・ネーチャー

アーキネット代表・横浜国立大学IAS客員教授 織山 和久

誰もが好ましく感じる街並みは、洋の東西を問わず共通するものがある。それはどうも数百万年も続いた狩猟採集生活に適応した社会性が、脳神経系の遺伝的な形質にまで埋め込まれたからなのでは、と考えている。

狩猟採集生活

ヒトは200万年以上も、小集団(ダンパー数によれば150人まで)を単位に狩猟採集生活を送ってきた。非力なヒトが食料を得るには綿密な共同作業が必要で、食料の保存も効かないので、獲物はすぐに等しく分けるのが基本だった。弓矢の名人もおとり役も平等で、誰かがひとりじめしたりすると集団からのけ者にされる。小集団は何百キロも先の小集団と贈答品をやりとりして、気候変動などで食料不足になるときは、お互いに食料を融通して生き延びた。一方、敵対関係にあって襲撃してくる集団には力で対抗し、残忍な仕打ちもする。

生得の社会性

長年に亘る適者生存の過程を経て、こうした社会的行動に適応しやすいように進化はヒトの脳神経系の形質にまで及んだ。近年のfMRIを利用した実験がこうした事実を明らかにしている。フェアな人が痛がるとその痛みを前頭皮質で共感し、逆にズルする人が痛がると側坐核で快感を覚える。表情で意思疎通し、相手の表情から敵味方を判断する視覚神経系もとりわけ発達する。こちらが信頼して相手もそれに応じるときは、見知らぬ人に対しても愛情ホルモン(オキシトシン)が分泌され、そうでないときは攻撃ホルモン(テストステロン)が分泌される。

先史時代の洞窟絵画。 小集団での採集狩猟生活は数百万年続いた。

このようなヒトの性向は、市場経済も支えている。11世紀の地中海貿易もその一例である。遠隔地貿易に従事したマグリブ貿易商は,現地での荷物の運搬や代金の受領等で代理人を雇用する。一回きりだと代理人はさぼりや持ち逃げなどしかねないが、貿易商らは代理人たちと繰り返しの関係を結んで評判を重んじた。もし信頼を損ねる代理人の行為があれば、貿易商らは一種の村八分戦略を使った。統治者が貿易商らの権利を損ねるようなときは、一丸となって報復する。江戸時代の株仲間も同様な仕組みで、巨大な全国経済を発達させた。現代の企業も、取引先や社員等との長期的な関係を築いて調整費用を抑え、信用と実績で持続的な成長を図っている。

都市空間への反映

都市についての直観的な評価も、こうした狩猟採集生活を経て形質にまで織り込まれた社会性に裏付けられる。

(1)対面性

日頃から顔見知りと出会っては、笑顔で挨拶を交わせれば気分はいい。いくらネットや電話が発達しても、表情から得られる情報が圧倒的である。だから関係の深い人たちは、顔を合わせやすくするように活動の場はお互いに近くなる。うちからふらっと出て、ぶらぶら歩きを楽しんで、そんな顔馴染みと道端や市場、店などで触れ合うことがしやすい街を好ましく思う。

(2)親和性

お互いに長く信頼できる人々、そんな人々にそばを囲まれていれば、心安らぐ。その人数は150人いれば十分、だいたい村落や町丁の規模もそんなものだろう。周りに仲間がいると思っていれば、よそ者が訪れたにしても、その表情に友好的のサインがあれば素直に受け入れられるものだ。こうしてある程度の安心感があれば、窓の目隠しや高い塀はおのずからいらなくなる。いったん奥に入ると路地に対して開いたような街並みには、お互いの信頼関係が大事、というほのぼのとした雰囲気が伝わる。もちろん無表情な一見さんには警戒してしまうのだが、そこは城壁で囲うという不作法なやり方ではなくて、街の奥に迷路や行き止まり、そして周りの視線があってちょっと入りにくくしている。

キャンパスの光景。 授業の合間に友だちと語らううちに笑顔が浮かぶ

竹富島の街並み。 ジグザグの道に沿って、外に開かれた住まいが並ぶ

(3)公平性

ご近所のご隠居さん、○○くんのパパ、〇〇ちゃんの飼い主さん、といったように街で出会うときは、お互いに誰もが平等になれることが心地よい。地位や肩書も関係なくて、だれも同じように触れ合う。

空間利用についても、公園の広場や散歩道のように、老若男女誰もが等しく楽しんでいる光景には微笑ましく思う。建物の規模・形態も、自宅と同じように揃っていれば心安らぐ。

一方、特権などで都市空間をひとりじめすることには、無意識に反感を抱く。規制緩和でそばに巨大なタワーが建つときは「空を奪うな」、規模・形態・意匠などで突出した建物ができると「不釣り合い」といった具合。そんな突出した建物が取り壊されると、ほっとしたりする。

竹富島の光景。 粒立ちの揃った住まいが、ほどよい間合いで建ち並ぶ。空が広い

街並みを眺めていて心地よく感じたら、それは「ヒューマン・ネーチャー」にもとづくからだと思ってもいい。そんなときは、そっとマイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネーチャー」を口ずさんでみよう。

Looking out
Across the morning
The city's heart begins to beat
Reaching out
I touch her shoulder
I'm dreaming of the street

筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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