「新築・中古」を越えた選択肢
今、注目のリノベーション
第五回 『サスティナブル住宅。一棟丸ごとリノベーションができるまで。』
株式会社リビタ 土山 広志
こんにちは。リビタの土山です。前回(第4回)リフォームとリノベーションの違いについて紹介しましたが、価格や自由度、保証など、それぞれにメリットデメリットがあることはご理解いただけたことと思います。そして何より、お客さまがライフプランに合わせて計画的に住まいを買いたいときに買えるのは、市況に流されないリノベーション住宅であるということもお分かりいただけたことと思います。
しかし、そんな経済的かつ合理的なリノベーション住宅の魅力について正しい理解を妨げているものは、新しいもの=良いもの、旧い汚い=使えない、そして"新築至上主義"という私たち日本人の固定概念なのです。確かに経年した建物の設備や外観が老朽していくことは避けられません。しかし、管理組合のもと正しくメンテナンスを行い、必要に応じた修繕を実施していけば、健康な建物として永く住み続けることができますし、売却する際の評価もあがります。
現在の日本の中古住宅流通事情では、マンションの大規模修繕に莫大なコストがかかるため、オーナーや管理組合によっては何年も放っておく物件も少なくありません。今、リノベーションがブームだからといって、そのような状態の中古マンションの一室を買い取ってリノベーションを実施するのは、単なる賭けにすぎません。
大切な家族が安心して永く住まうために、中古マンションに対する不安や嫌悪感を、安心と快適へバリューチェンジすることができないか? それを実現するための手法が、専有部も共用部も敷地内もトータルでリノベーションする「一棟丸ごとリノベーション」です。
「一棟丸ごとリノベーション」という住宅供給の方法は、通常の新築マンションと違って、住まいの作り方(スキーム)やお客さまへの販売スタイルも異なるため、お客さまにはリノベーション・マンションが出来るまでの一連の流れについてご理解いただく必要があります。この一連の流れをきちんとご理解いただければ、中古マンションに対する不安や嫌悪感はおおかた払拭されるでしょう。
今回は、リノベーション・マンションが出来るまでの流れを通して、当社の手掛ける「一棟丸ごとリノベーション」の手法と魅力についてご紹介したいと思います。
■一棟丸ごとリノベーションの流れ
1.厳選された中古マンションの選択
中古マンションの流通市場では、マンション一室だけでなく、建物自体も売買されています。それは賃貸マンションだったり商業複合施設だったり企業が使わなくなった社宅だったり様々です。当社では、そんな既存建物の品質や立地環境をはじめ、様々な角度から建築物を調査します。お客さまが安心して永く暮らせる住まいのベースとなるものですので、リノベーションの目利きが厳しくチェックし、厳選された物件を事業者(当社)が取得します。
現地調査の様子
敷地内、専有部、屋上まで隅々チェック
2.建物・設備診断 [デューディリジェンス]
取得した建物は、建物の現状を知るために、「コンクリート採取」や「給排水管チェック」などきめ細かい検査・診断を行い、建物の耐震性や劣化状況を確認します。これらの調査は「デューディリジェンス」と呼ばれ、直訳すると「相当・適切・正当な注意、配慮」という意味で、ここでは「建物に対して当然実施すべき適切な修繕」と言えるでしょう。事業者による不正や隠蔽のないよう、公平な立場で建築確認検査を行っている第三者調査機関によって実施しています。
(※調査内容はプロジェクトによって異なります。)
3.建物全体修繕・リニューアル
第三者機関による建物・設備診断の結果をもとに、建物全体の修繕計画を立案。見た目の美しさだけでなく、機能性の向上も考慮して、建物全体のリニューアルを行います。当社の過去の一棟丸ごとリノベーションの事例ではすべてデューディリジェンスを行うことで、品確法に基づいた「既存住宅性能表示制度」を適用し、さらに建物の品質の証明となる「現況調査・評価書」を発行。これらの総合判定で[A]判定となる計画を取得しています。
4.外観・共用部のデザインリノベーション
建物の共用部もリノベーションできるのが、一棟丸ごとリノベーションの最大の特徴。建物本来が持つポテンシャルを最大限に引き出し、かつ周辺の街並み景観に美しく映え、そこに住まう人の誇りとなるような住まいを目指して外観・共用部のリ・デザインを計画します。
5.生活インフラ整備、先進設備の導入
既存建物でもっとも課題となるのは、竣工当時から大きく変化した生活環境です。一棟丸ごとリノベーションは、共用部を大胆に工事できるため電気幹線の増強が可能。人気の次世代オール電化やインターネットシステム、セキュリティの導入など、時代のニーズに合わせたインフラを採用し、機能性と快適性を獲得しています。
6.専有部のデザインリノベーションと自由設計
実際にある建物の住みたいお部屋を見てからご契約いただくため、風通しや日当たりなどを予め体感できるのがリノベーションのいいところ。お部屋が決まったら、各住戸の間取りや仕様を自分好みにセレクトすることができます。当社では、お客さまリノベーション住宅のイメージを持っていただけるよう、リノベーション前とリノベーション後のモデルルームを複数プランご用意しています。
もちろん、建築家とともに自由設計して、お客さまらしいオンリーワンのマンション版注文住宅を創ることも可能。お客さまが安心して自分らしい理想の住まい作りができるのも、建物(躯体)やインフラ(設備等)が整い安心のベースがあるからです。
7.一棟丸ごとリノベーション、完成!
環境にやさしく、建物の安全性や機能性、経済性に十分なゆとりのある住まいが誕生です。
(当社の一棟丸ごとリノベーションプロジェクト事例写真を一部紹介いたします)
■時代がもとめるサスティナブルな住まいのカタチ。
一棟丸ごとリノベーションの流れをご覧いただき、既存建物がリノベーションによって可能性を見出されることを感じていただけましたでしょうか。リノベーションを「人間」にたとえるならば、人間ドックのような徹底した調査・診断(デューディリジェンス)、リハビリのようなインフラ環境設備、そして活き活きと健康になった体を表すようなデザイン性といえるでしょう。つまり、一棟丸ごとリノベーションは中古マンションに対する偏見や嫌悪を感じることなく、機能美と快適さを獲得し安心して暮らせる住まいなのです。
そして、一棟丸ごとリノベーションは、「建物を壊さず活かす」ことはもちろん、建物が竣工された当時から積み上げてきた人と建物の歴史、地域とのつながりも壊さず、引き継いでいくことも重要な理念のひとつ。そんな一棟丸ごとリノベーションは、まさにこれからの時代のあるべき住まいのカタチとなるでしょう。
土山 広志(つちやま ひろし)
株式会社リビタ クリエイティブオフィス マネージャー兼 PR&コミュニケーションデザイン室 マネージャー。大学卒業後、大手デベロッパーでマンションや商業施設の企画・開発を多数経験。2008年1月よりリビタへ入社。様々な分野のマーケティングに精通し、リノベーションを通してこれからの住まいのあり方を提唱している。