中立・公正に調査・評価して、東京圏の優良な中古・新築マンションをご紹介

トップページ 運営団体 サイトマップ 利用規約 プライバシーポリシー
マンション評価ナビ 日本初の中古マンションの調査・評価情報サービス。国土交通省「超長期住宅先導的モデル事業」に採択されました。マンション評価情報は広告ではありません。 サイト内SEARCH キーワードで探す
中古マンション 新築マンション 不動産会社情報 評価者ブログ 選び方ノウハウ 初めての方へ

価値を高めるリフォーム「リノベーション」vol.2 


「新築・中古」を越えた選択肢
今、注目のリノベーション

第二回 『リノベーションはブームなのか?今、注目されている理由』
〜その1 住宅供給者(不動産デベロッパー)の場合〜

株式会社リビタ 土山 広志

 みなさんこんにちは。リビタの土山です。第一回目のコラムでは、第一次住宅購入者層の育ってきた環境や社会的背景の中に、リノベーションのニーズが存在していることをお話しました。では、今なぜリノベーションが注目されているのか?について、「需要」(消費者)と「供給」(不動産デベロッパー)の関係からみていきたいと思います。第二回のテーマは住宅の「供給」側である不動産デベロッパーの視点から。ちょっと気難しい話題?とお感じになられるかもしれませんが、これから住宅購入をお考えの方は買い手(自身)の視点だけでなく、売り手(供給側)の動向を理解することも、賢い住宅購入の秘訣ですので、参考として読んでみてくださいね。

リノベーションの、ブームって?

 リノベーションという言葉でなければ、もっと前から始まっていたのかもしれませんが、最初のリノベーション・ブームと言えるのは2001、2年くらいでしょうか。当時、中古マンションや倉庫などをリノベーションやコンバージョンして住居にすることが、クリエイティブな仕事をしている人たちの間に広まり注目されていました。もちろんそのニーズの中心にあるのは、独創的な住空間とデザイン。それを実現させていたのは建築家や設計事務所のデザイナーで、斬新な住宅が雑誌ブルータスやライヴスなどで紹介されていました。さらに、2003年にはホテルクラスカがリノベーションホテルとして世界各国から注目され、この頃から住宅関連の媒体(書籍、雑誌、新聞等)で、頻繁に特集が組まれたり、書籍が発行されたりすることが多くなりました。その後、当社が設立された2005年には、当社が初めて建物を一棟丸ごとリノベーション分譲する(井の頭公園プロジェクト)という大規模な取り組みを行い、リノベーションがデザイン中心だけのものではなく、建物自体のバリューアップ(構造面/設備面/インフラ面)と、個々の住み手のライフスタイルに合わせた専有部の設計(自由設計)によって、リノベーションが特別な人のものから普通の人のものへ、広まるきっかけとなりました。

リノベーションが注目される、切実な理由

 今までのリノベーション・ブームは、上述のように個人的なデザイン志向から、ストックを活かした建物全体のバリューアップへと、そのスケールの広がりはあるものの、やはりユーザーニーズが中心。すなわち住み手のためのものでした。しかし、最近のリノベーションに対する注目度は、ちょっと傾向が違うようです。

 私は最近、住宅供給者(不動産デベロッパー:マンションなどを企画・開発している会社)から、リノベーション事業の取り組みについてヒアリングをさせて欲しいということで、お話をさせていただく機会が何度かありました。彼らはいわゆる大手不動産会社。大規模な不動産開発と住宅供給数を誇り、地名もブランドも確立している企業です。ではなぜ、今、彼らがリノベーションに注目しているのでしょうか?

 久々に訪ねた街を歩くと、目印にしていた建物が見当たらないときがあります。そこでは集合住宅建築予定を知らせる建築計画の看板が掲げられ、柵に囲まれた更地があります。このように、新たに不動産開発をするためには、まず土地が有りきです。東京都心には、更地などほとんどありませんから、当然、希望のエリアポイントに存在する既存建物を解体(スクラップとも言います)し、土地を取得しなければなりません。ところが、現在は建物解体コストが非常に高い。しかも、解体する建物がちょうど築20年弱を経過するバブル時期のものであれば、構造がしっかりしたものが多く、解体には時間と労力、コストがかかります。産業廃棄物も増えます。つまり、本来の企画・開発の前にコストがかかりすぎて、これが事業収支として割に合わない・・・。そこで関心をもったのがリノベーション。既存建物を壊さない、更地にしない、解体コストがかからない。事業コストの削減や開発期間の短縮などが見込めるリノベーションなら、事業として取り組むには非常に魅力があるはずだ、というのです。

 ここで誤解のないよう申し上げますが、当社は設立3年目のリノベーション専門会社ですが、コスト削減を目的として設立したのではありません。人口減少、過剰な住宅供給数(供給数が世帯数を越えている)といった社会的背景から、今後増え続ける不動産ストック(中古・既存建物)を活用し、環境に配慮したサステナブルな事業を通して、お客さまにもっと自分らしい住まいを「リノベーション」で実現して欲しいという思いでスタートしています。そのため、デベロッパーからのコスト削減重視の相談は、お互いのリノベーションに対する理念に、ズレを感じざるを得ませんでした。とはいうものの、市場の活性化のためには、不動産デベロッパーにはどんどんリノベーションに取り組んでほしいと思っていますので、私は当社の事例を通してリノベーションの魅力や苦労話などを説明させていただきました。しかしながら、結局のところ、「そんなに大変なのですね・・・」という言葉を残し、渋い表情でお帰りになられる方がほとんどでした。

リノベーションの、理想と現実

 渋い表情でお帰りになられた理由は何か?それは、新築の住宅開発と、リノベーションの住宅開発では、そもそも作り方も考え方も違うという、大きな壁に直面したためだといえます。後の回で具体的に紹介させていただきますが、リノベーションは既存建物を活用するため、エレベーターが無いとか、セキュリティが乏しいとか、エネルギー容量が現在の暮らしに合っていないとか・・・最初から課題が山積み。問題を挙げたら切りがありません。また、当社の場合は、一棟丸ごとリノベーションする場合、建物の調査を行います。修繕が必要であれば、徹底的に改修します。そうした問題をひとつひとつクリアしていくのが、リノベーションの苦労であり、おもしろさでもあるのですが、ご相談にお越しになるデベロッパーの方々は、それらになかなか共感されず帰っていくのです。

 私は当社に来る前まで、新築のデベロッパー側にいましたので、彼らの戸惑いは十分理解できました。本当に、作り手の文化が違うのです!新築の開発は、まず土地を買い取り、更地にして、まっ白なキャンパスに描くように開発するため、事業を妨げるものはありません。リノベーションとは作り方が真逆なのです。新築の作り方の文化や価値観から脱却し、企業全体がリノベーション本来の価値と使命を共有しなければ、事業は成り立たないのです。リノベーションって、それほど、覚悟のいる事業なのです。こんな風に、お客さまニーズがあるとわかっても、コスト削減が実現するとわかっても、結局足を踏み入れられない供給側の状況は、同業界の者として少し寂しい感じがします。

変われるか、変われないか。

 最近毎日のようにニュースになる、レギュラーガソリンの値上げや、家庭を直撃する電気・ガス代の値上げ。これらの消費価格の高騰は、産業廃棄物の解体コストの高騰とイコールです。そして、それはそのまま住宅販売価格に直結しています。不動産の新規開発にかかる費用のうち、どうしても避けられない建材コストの高騰は、作り手の商品企画に「遊び」や「ゆとり」がなくなり、画一的な(言い換えればおもしろみのない)住戸ばかりがうまれてくる。しかも、高い。ゆえに、売れない。だから今、デベロッパーは更地にする必要の無い(初期のコスト削減につながる)リノベーションに注目しているわけなのです。

 こうした供給側の厳しい現状が、今、リノベーションが注目される理由だとしても、(つまりユーザー視点でなく社会情勢の影響だとしても)そこから思い切って立ち上がり、我々と一緒に旧い建物への課題に立ち臨んで、お客さま視点のリノベーションに取り組んで欲しいと思っています。それは企業にとってはビジネスチャンスであり、お客さまへ新たなサービスを届け、企業価値が高まることでもあるからです。新築デベロッパーも、我々リノベーション事業者も、住宅供給者としての使命は同じなのですから。このデベロッパーたちが、変われるか、変われないか。どちらに進むべきかの選択は、もう目の前にきています。彼らのリノベーションに対する注目がもっと盛り上がり、一斉に立ち上がるとき、日本の住宅市場は変わる!私はそう信じています。

それでは、次回は“消費者の視点”でリノベーションが注目される理由をお話したいと思います。

土山 広志(つちやま ひろし)
株式会社リビタ クリエイティブオフィス マネージャー兼 PR&コミュニケーションデザイン室 マネージャー。大学卒業後、大手デベロッパーでマンションや商業施設の企画・開発を多数経験。2008年1月よりリビタへ入社。様々な分野のマーケティングに精通し、リノベーションを通してこれからの住まいのあり方を提唱している。

コラムサイト 変わる暮らし・変わる住まい
マンションの注文住宅「コーポラティブハウス」
コーポラティブハウス募集プロジェクト情報

マンション評価こぼれ話