私たちインスペクター(建物調査員)が室内の点検を行なうときには、いくつか道具を使います。
その中で、とても簡単に使えて、ホームセンターなどでも比較的安価に購入できるツールのひとつが「水平器」。
いろいろな長さがありますが、30センチ〜40センチのものが便利です。ホームセンターで、1200円〜2500円程度で売られています。
中央の透明な部分に気泡が入った液体が入っていて、水平器を当てたときに気泡がどこに来るかで傾きがわかります
上記写真のように、気泡が黒い線と線の間にあれば「水平」な状態です
気泡がどちらかに偏ると、その偏った方向が「上」になってやや傾いていることがわかります。
たとえば気泡が左に寄っていれば、『左から右に下がっている状態』ということです。
では、早速使い方の例をご紹介しましょう。
私たちがマンションの内覧会で通常使っているのはこういったところです。
バルコニーの排水側溝です
写真では、右側に排水口がありますから、この側溝は左から右に下がるように、緩やかに傾いている必要があります。
ですから、水平器を置いたときには、気泡がやや「左寄り」に来るのが正解。
では気泡の位置を見てみましょう。
気泡がやや左寄りにあるのがわかります
写真を見ると、この側溝は左側から右側に掛けて「下っている」状態だということがわかりますので、適正な施工状態だと判断できるわけです。
ちなみに、もしこれが逆の傾きだとどうなるかと言うと、雨が降ったあとに側溝に向けて水が流れてくれないため、側溝に水溜りができてしまいます。
少量(24時間前後で蒸発する程度)であれば問題ありませんが、何日も蒸発しないくらいしっかりと水溜りができてしまうと、苔が生えたり・・・と気持ちの良いものではありません。
側溝の傾きが逆になっている場合などは、施工会社に手直しを依頼しましょう。
水平器の使い方はこれ以外にもたくさんありますが、皆さんが内覧会のときなどに使うとすれば、下の写真のような使い方もいいでしょう。
壁やドア枠、床などにあてて、大きく傾いているところが無いかを抜粋チェックできます。
さくら事務所の内覧会立会いでは、インスペクターは専用の計測機器(レーザー)を使用しますが、一般の購入者の方々がご自身で傾きを調べたい!ということであれば水平器がお勧め。
目安は前述のように、両側にある黒い線(緑の矢印のところ)。
気泡がこの線の位置までぐーっと偏っているような場合は、傾き量は大きめです。
壁も床も建具も、職人さんが体を使って立て、工具で固定して・・・という手作りですから、機械のように「誤差ゼロ」の完全な水平・垂直を作ることは難しく、ある程度どんな家の壁・床・建具にも傾きはあると思います。
ただ、やはり施工不良で壁や床、建具などが著しく傾いているときがあり、その場合は、当然修繕工事を依頼します。
一般に「許容施工誤差」というのが数値で決められていて、その数値内の傾きは手直しする必要はありませんので、もし水平器で壁や床の傾きがあるのがわかったら、まずは施工会社に、計測機器できちんと計測して状態を確認してもらえるよう、お願いしてみてください。
計測数値などをもとに状況を説明してもらい、そのうえで修繕工事が必要なものなのかどうかを判断しましょう。
辻 優子(つじ ゆうこ)
大手マンションデベロッパーにて、新築マンションの販売、現場施工管理から各種購入者向けセミナー運営など幅広く携わった後、 (株)さくら事務所参画。働く主婦目線でのきめ細やかなアドバイスにも定評がある、女性コンサルタント。
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