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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.56 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

木造・戸建ての社会的費用 (3)街並み劣化

(株)アーキネット代表 織山 和久

戸建てによる土地細分化

 周りに戸建てが建て込むほど、街並みを損なって一帯の地価を下げる。世田谷をモデルにした試算では、地価を最大で25.1%も引き下げるほどのマイナス要因になる。

上記表をクリックすると拡大画像をご覧頂けます。

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 世田谷をはじめ地価が高い都市部で土地付き一戸建てにこだわると敷地を細分化せざるとえない。元々は敷地面積270m2だったとすると、地価は569千円/m2として土地代だけで1億5千万円を超える。住宅の工事費等を含めれば2億円前後、羽振りのいい人でもここまでは予算は出せない。建売業者はこの土地を取得すると、売りやすくするため小さく区画割りする。一区画270m2であれば、90m2×3区画、一区画当たり5千万円ほどにして売り抜くのが常套手段である。いったん細分化されれば、まず元には戻らない。こうして区部では、100m2未満の土地所有者は全体の47.7%(面積比では16.0%)*1を占めるに至っている。

細分化と街並み劣化

 このように戸建てが建て込んでいくと、景観価値を損なう。右表、世田谷区を例にしたヘドニック分析*2によるとm2当たりの地価にして、エリア内の平均敷地面積が1m2小さくなると2,363円安、100m2未満の戸建宅地率が1%上がると768円安、といったマイナス効果があることが導き出されている。

周りにミニ戸建てがちらほら

 この地価関数を元にして、周辺の3宅地が細分化されたケースが試算され、2,363円/%×1.6%+(-768円/%)×26.5%+(-171円/m2)×47.6m2=-24,711円/m2 安くなるとされる。これは元の地価が569,330円/m2なので、4.3%減少したことに相当する。 要するに、周りでたった3区画がミニ戸建てになるだけで、自分の土地の価値が4.3%、661万円相当下がってしまうことを示している。

一帯がミニ戸建てに

 こうした土地細分化が全区画に広がったとしたら、どうなるだろうか? こうなると3区画のケースと違って、地価公示の区画評価のコメントで「中小規模(150m2)、小規模(80m2)」が当てはまる。環境評価についても「閑静な」「区画が整然」といったコメントの対象から外れる。これらを考慮すると、細分化が全区画に及んだ場合(図では17区画)は、2,363円/%×15%+(-768円/%)×100%+(-171円/m2)×(270m2-90m2)+(-44,003円/m2)+(-26,642円/m2)=-142,816円/m2 というマイナスの資産効果を生むことになる。元の地価と比べて25.1%減、元の敷地面積で考えると、3,856万円ものマイナスである。ミニ戸建てによる街並みの劣化は、一戸当たり(一区画90m2)に換算すると、最大約1,300万円の資産価値を損なうという試算結果である。元から細分化されていれば、その分、いまの地価は低く評価されていると考えられる。

ミニ戸建ての資産減損効果は最大1,300万円

 要約してみよう。都市部でありながら戸建てにこだわると、区画は細分化される。こうして建て込んでいくと、一帯の街並みの価値を大幅に損ない、ミニ戸建て一戸当たりにして最大約1,300万円、元々の区画には約3,900万円もの資産減損効果をもたらす。戸建てによる土地細分化を許すと、都市景観に対して、これほどの社会的費用・外部不経済が発生する。

区画を広めに

敷地を一体のままにして建築された集合住宅。街並みを整える規模と外観

 このように検討してみると街の魅力を保つには、都市部では最低敷地面積規制や小規模宅地累進課税が有効だということが理解されるだろう。東京各区でも、敷地面積に最低限度を設ける制度を導入している。けれども住宅地として一般的である容積率60%の地区でも、最低敷地面積は60m2ないし70m2となっていて、最低限度としては低すぎて街並みを良くするには効果に乏しい。田園調布地区計画でも165m2、成城では125m2(平均250m2なので二分割まで許容)である。街の価値を高めるには、最低限度は300m2でもおかしくない。それ以下の既存宅地には外部不経済に応じた累進課税、25.1%減価なので戸建ての耐用年数を約25年として均等割にすると、最大で実勢地価に対して約1%の固定資産税を重課するのが妥当である。都心部では、このような細分化抑制措置によって区画を大きめのままにして、集合住宅をつくるのが望ましいのではないだろうか。

*1 東京都「東京の土地 2010」平成23年10月
*2 国土交通省 土地・水資源局「敷地細分化抑制のための評価指標マニュアル」平成20年3月
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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