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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.45 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

エコとコーポラティブハウス(3)
通風 〜 夏の過ごし方

(株)アーキネット代表 織山 和久

冷房効果を上げるために

 夏の暑さをエアコンでしのぐとき、省エネ対策をするほど住まいは冷蔵庫に近づきます。昨夏は震災の影響で節電対策が謳われましたが、その中身(厚生労働省4月14日)を改めて見てみると
・空調温度の引き上げ(目安温度の設定)
・照明の消灯(昼間は使わない)
・家屋の遮熱性向上(すだれやカーテンの利用を)
・家族はなるべき一部屋で団らんを
・電力需要ピーク期の家族旅行
 といった具合で、エアコン利用が前提です。カーテンを閉じて照明もつけず、一部屋に家族が集まるという発想です。省エネ住宅でもこのエアコン前提は同じです。エアコンが効くように、高断熱・高気密にして最新の省エネエアコンに交換、空間を小割りにして窓にはカーテンを引く、冷やすものはそこに集めるというまさに「住宅の冷蔵庫化」です。

通風の効果

 夏はエアコンに頼るしかないのでしょうか? 救いは通風にあります。風の効果は絶大で、気流速度0.1m/秒の増加が、体感温度では1.1℃の室温低下に相当すると言われます。皮膚表面をなでる風が、皮膚に滞留する空気層をのけて汗の蒸散を促すからです。実大の住宅モデルによる実験*1では、通風のある室内では通風のない状態に比べて7~9℃体感温度が低下し、24~26℃相当の快適な室内気候になりました。これならエアコンはいらないぐらいです。南北に風の通り道がある場合でしたが、東西窓まで開放すると中心風速は2~5割、天窓を開放すると2割も増加するなど、開口の大きさや位置が大きく左右することが分かりました。開口計画の重要性が浮き彫りにされます。
 ちなみにこの実験結果が報告されたのは、昭和58年。いまから30年近く前にすでに通風の効果が実測データで検証されていながら、その後、ひたすら一家に一台から一部屋に一台とエアコンの改良・普及そして高断熱・高気密化が進められたのは不思議です。業界の利害以外に何か動機はあるのでしょうか? 東京あたりの気候であれば、通風を考えた住宅にすれば、夏でもエアコンもほとんど使用せずに暮らせると分かっていたのですから。

マンションと通風

 通常のマンションの間取りを見ると、通風はほとんど期待できません。右の住戸プランでは、東西に風が通る場合は壁が邪魔でまず風は入りません。南北に風が通ると仮定しても、南側の窓を開けたところで、廊下のドア、居室のドア、居室の窓が塞がれていては北側に風は抜けず、風は入ってきません。廊下と玄関のドアを開ければ、通風率は2~3倍にもなる*2そうですが、夏の夜に玄関ドアを開放したまま眠るのも不用心です。こうなるとエアコンに頼るしかないのでしょう、幸か不幸か、空間は小割りにされていて、居場所を限れば冷房効果は上がるようです。

コーポラティブハウスで過ごす夏

(C)川辺明伸 / ヘリコ

 良心的な建築家の間では、「住まいの空調を機械頼みにしてはならない。風など自然の力を生かすのが主で、機械はあくまで従でないと気持ちのいい空間にはならない」が共通認識です。建築家が設計を始める前には、計画地をじっくり観察し、周りの建物や樹木との間合いや見え方、日差しの入り方、アプローチを歩きながら見える光景など、その場所ならではの特徴をつかみます。風の抜け加減はその大事な要素で、建物の隙間からでも風の通り道を見出します。通常の分譲マンションのようにどんな場所でも共通のプランニングで済ませるのとは決定的な違いがあります。
 そして住居空間を構想するときは、風の抜け方もシュミレーションしながら開口部やレイアウトを検討していきます。開口部は各部屋に二つ以上、できれば対角線上に配置する、ジャロジーや縦長すべり窓などを採用して、就寝・外出時でも開放して風通しよくする、といった工夫が盛り込まれます。もちろん平面上だけではなく、天窓や高窓、階段など立体空間の上下の空気の動きも大切にされます。地下空間は天然の保温環境ですので、長時間過ごす寝室やリビングに積極的に活用されます。夏でも夜間の外気を室内に通気できるのであれば、午前中いっぱいは数度も涼しくもなります。このようにして良心的な建築家によってつくり上げられるコーポラティブハウスですから、住まいのどこにいても心地よい微風が流れて、ひと夏エアコンをほとんどつけずに暮らすこともできます。自然の力を機械でねじ伏せる住宅ではなく、自然の力を生かす住まいの方が、ずっと居心地良く暮らせて、当たり前ですがエコになります。

*1 赤林伸一・村上周三・加藤信介・小林信行・服部孝博「住宅の通風に関する実験的研究 その1 実大の住宅モデルにおける測定」1983
*2 上林加代子・樺野麻衣子・高橋達・宿谷昌則「換気手法の違いが室内の温熱環境に与える影響に関する実測」1998
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「東京いい街、いい家に住もう」(NTT出版)、「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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