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マンションの注文建築「コーポラティブハウス」vol.27 


都心・安い・自分仕様
コーポラティブハウスの魅力

「日とコーポラティブハウス」

(株)アーキネット代表 織山 和久

(1)空間の奥行きを感じる ―光の綾―

 光の綾が織りなす、空間の存在感は人に安心感を与えてくれます。
 さまざまな方向から光が回り込むことで、目にするモノの形や表面に応じて微妙な陰影をつけ、モノの立体感や肌触りを教えてくれるからでしょう。
 人と人との間でも、光の重なりは重要と言えます。
 相手にさまざまな方向から光が当たることで、顔の向きや細かな表情まで読み取ることができます。実験によると、面と向かったコミュニケーションでそのメッセージ受信内容を左右するのは、声のトーンが38%、表情や目線は55%と大半を占める結果が示されています。言葉そのものでは7%しかありません*1。パートナーの問いかけに対して、ろくに目も合わせずに生返事をしたばかりに、手ひどい反撃を受けるのもそういったことが原因と言えるでしょう。

 こうした光の重なりは、右写真のように、上下左右さまざまな方向に適切に開口部を設けることで得られます。壁・床・天井が適度に反射する素材であれば、光の綾はさらに微妙な重なり具合となります。
 逆に、採光面が南側だけ、となるとテレビやモニターの画面のように陰影具合も大まかで、モノや空間の実在感は失われます。家族間のコミュニケーションにもマイナスになるでしょう。
 南住まいを選ぶときは、面採光の売り文句だけに誘われるのではなく、繊細な光の重なりができるのか、という観点から開口部や反射などの様子を見て判断したいものです。

(2)一日の時の流れを味わう

 爽やかな朝日ですっきりと目覚め、昼間は明るい日の下で気持ちよく洗濯や庭仕事、日暮れ時には風景を赤く染める夕日を眺めて静かな心持ちに、と一日の日の光の動きと気持ちは深く関わっています。
 最近の生物時計に関する分子生物学の研究*2では、視床下部視交叉上核にある中枢時計が、心臓や肝臓など体内各所に末梢時計を調整し、その中枢時計は網膜が光の刺激でメラトニンを分泌して同期をとっていることが分かってきました。中枢時計と末梢時計のズレは、睡眠障害から生活習慣病にも関連しますから重大です*3。この中枢時計では、網膜に朝日を浴びるとセロトニン(その不足がうつ病の原因とされます)が分泌され、その14-5時間後にこのセロトニンを原料に睡眠を誘うメラトニンが合成されることで、一日のリズムが刻まれています。
 それだけに住まいの中で日の移ろいを受け止めること、特に朝日をとりこむことは、心地よい生活リズムを保つためにも大切なことが分かります。こうした観点から開口部のとり方を工夫すると、一日のときの流れと共に住まいの中で日の当たる場所が刻々と移り、どの場所でも明るくなるときと暗くなるときができます。毎日、こうした一日の日の移ろいを感じられれば、生体リズムも好調でゆとりのある心持ちで、時の流れをより深く、より豊かに味わうことができるでしょう。

(3)季節の移り変わりを感じる

 潤いのある空気に乱反射して、柔らかに届く春の陽射し。
 真夏の焼け付くような強い日差し。
 晩秋、小春日和のほんわかとした陽だまり。
 穏やかに床を暖めてくれる、住まいの奥まで届く静かな冬の陽射し。
 モノの輪郭を鋭くくっきりと見せてくれる、冬の冷たく乾燥した空気。
 このようにして、四季折々、日の光はその性質を変えて、一年の移り変わりを深く実感させてくれます。

 季節ごとの日の光を味わうために、住まいには昔から工夫がされてきました。
 春秋の柔らかな日差しにのんびり当たるために、縁側を設けます。夏の陽射しを和らげるために庇を延ばします。延ばした軒下に簾を下げるのも、夏の直射日光を避ける工夫です。庇が長くても冬は日の入射角度も小さいので、部屋の奥まで光が届くことには変わりがありません。寒い時期には、縁側の外と内で仕切り、空気で断熱するのも優れた知恵でしょう。
 このように季節ごとの日の光を、体に優しく受け止めるために、現代のコーポラティブハウスでもさまざまな建築上の工夫が凝らされています。
 リビングを地階に設ける条件を生かし、夏の陽射しはドライエリア外側の壁で抑え、天井床いっぱいに開口部を設けて反射光も合わせて日の光をたっぷりとりこむプランニング。大らかな開口部をそのままに、さりげなく庇を出して、夏の陽射しを避ける工夫。縁側部分を設けて、内側はガラス張り、外側はパンチングメタルで覆う計画。周辺の建物や隙間を詳細に検討し、その場所ならではの温度・湿度環境や日照条件等を見通して、優秀な建築家が設計すれば、このように日の光に馴染んだ住まいができるわけです。

 日照というと、南面採光だけに矮小化されがちです。けれども、それだけではモノや表情も平板にしか見えず、昼は眩しくてカーテンを閉め切ってしまいがちです。日照については、いろいろな方向から光が入る、光の入り方を巧みに和らげる、といった建築上のさまざまな工夫が出来ます。そうした建築の工夫が暮らす人々の生活リズムを整え、空間や時間をより豊かで確かなものに感じ取れる要因になることを、大事に考えたいものです。

*1 Mehrabian, A.“Silent messages” 1981
*2 岡村均・深田吉孝編「時計遺伝子の分子生物学」2004
*3 清水徹雄編「睡眠障害治療の新たなストラテジー」2006
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。

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