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コーポラティブハウスの魅力
「子供部屋は大人部屋」
(株)アーキネット代表 織山 和久
子供部屋は、実際にはどのように使われているのでしょうか?
『学校に上がれば子供部屋がいる、子どもの数がn人なら(n+1)LDK)が必要』というのは本当なのでしょうか?
子供部屋を与えられるのは、小学校低学年で約8割、中学年で9割以上にもなります*1。
ところが、子どもたちに実際に学習をする場所を尋ねると、中学生になるまでは家族の集まるリビングをより多く利用していることが図①を見て分かるように顕著に表れています。
さらに、一人寝を始めた時期は、子供部屋を与えられた時期よりも遅れる傾向にあります。平均でも6.2歳で子供部屋を与えられますが、一人寝を始めるのは11.8歳となっています*2(図②)。
このような結果からみると、中学に入るまでは子供部屋は無くてもいいかも知れません。
ところが、中高生になる頃には、ひとりになる時間が大切になってきます。子供たちの多くは、苦しいこと、つらいことに直面します。
大部分は学校生活面で、友達に無視された、嫌がらせされた、という対人関係が主で、中3以降は、授業が分からない、成績が上がらない、進路選択に迷う、といった学習面で悩み出します。対人関係や仕事に行き詰るという点では、大人と同じです*3(図③)。
興味深いのが、悩みへの対処方法です。
10代前半のうちは、周りに相談せずに、我慢する、あきらめる、といったように問題と向き合うことがなかなか出来ないようです。ところが10代も後半になると、友達に相談する、無視する友達と話し合う、勉強の仕方を変える、と自分から問題と向き合うようになります。いろいろな経験を重ねながら、自我がしっかりしてきた現われでしょう。こうしてみると、困難な事態に陥りがちな子供たちに、10代前半までは「何気なく寄り添える場」が必要であり、10代後半には「ひとりになれる場」が住まいに求められると考えられます。
「何気なく寄り添える場」は、居心地が良く気配を感じ合えるリビング・ダイニングということになるでしょう。考えどころは「ひとりになれる場」です。「ひとりになれる場」の要件として親にも子供にも共通しているのは、広さは2畳でもいいですが、外の景色が見え、中の気配も伝わる、ということです。
そして子供に本当に「ひとりになれる場」が必要になるのは中学生以降ですから、子供が巣立つまでのせいぜい10年足らずの期間限定です。
子供が巣立った後の子供部屋は、残った夫婦が、「ひとりになれる場」として使用すれば、無駄にならず、その後の長い夫婦生活にも良い影響を与えると思われます。仲の良い夫婦であっても、逆に仲の良い夫婦だからこそ、お互いに「ひとりになれる場」が必要なことを思い起こしましょう*4。
要するに、重要なのは大人には「ひとりになれる場」が必要だということです。
子供には「子供部屋」が当然という考えは捨てて、そこは自我のしっかりした10代後半の子供、その後は親御さんが過ごす「ひとりになれる場」だと考えてみるのはどうでしょうか?
そういう意味では、これからは「子供部屋」と呼ぶより「大人部屋」と呼んだ方が誤解がなくていいのかも知れませんね。
*1 |
・改森夏来(積水ハウス株式会社)
片山勢津子(京都女子大学)
近藤雅之(積水ハウス株式会社)
中村孝之(積水ハウス株式会社)
「子どもの居どころの変遷に関する研究〜住まいにおける子どもの居どころ その2」 2007
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*2 |
・片山勢津子(京都女子大学)
「親子の就寝形態と子供部屋について」 2006 |
*3 |
田崎敏昭・橋本真喜子「児童・生徒の心理的困難時における自己援助と援助要請」 2005 |
*4 |
織山和久「東京 いい街、いい家に住もう」p214、NTT出版、2009 |
筆者プロフィール
株式会社アーキネット代表。土地・住宅制度の政策立案、不動産の開発・企画等を手掛け、創業時からインターネット利用のコーポラティブハウスの企画・運営に取組む。著書に「建設・不動産ビジネスのマーケティング戦略」(ダイヤモンド社)他。