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マンションの終末期を見据えた購入方法1 建替えしやすい物件

人生100年時代の到来です。DINKSの方々の中には、マンションを買った後に続く人生が、70年超という方もこれから増えることでしょう。
自分たちが長生きする分、購入したマンションの寿命も長く維持したいものです。とはいうものの、50年、60年先のマンションの行く末を深く考える ことは、素人には限界があります。漠然とした不安を抱えつつも、思考停止状態でマンション購入を決断してしまう方が、実は多いように思います。

そこで、今回は「マンションの終末を見据えた購入のポイント」について考えてみたいと思います。

建て替えしやすいマンションの条件とは

物には必ず寿命がきます。そこで知っておきたいのは、寿命がきたときに、建て替えしやすいマンションとはどのような条件をそなえているかということです。

建て替えしやすいかどうかは、容積率を確認することである程度の想像がつきます。過去の建て替え事例を見る限り、建て替えが実現しやすいのは、居住 者が建て替え費用を負担しなくても良いマンションです。それは、容積率の余裕をもって建てられたもので、建て替え後には、住戸数が増加するマンションで す。

容積率と費用負担の目安は以下のとおりです。
A:容積率を1/3しか使っていない場合(3倍以上大きく建てられる)
  → 費用負担が一切かからない可能性もある
B:容積率を1/2しか使っていない場合(2倍大きく建てられる)
  → 1戸あたり500万~1000万円の費用負担が必要
C:容積率に余裕がない場合(今と同じ戸数でしか建たない)
  → 1戸あたり2000万円程度の費用負担がかかる
D:容積率が不足している(既存不適格)場合(今より少ない戸数しか建たない、減築)
  → 1戸あたり3000万円以上の費用負担が必要

4つの建て替えパターンからみて、実際に建て替えできるのは、建て替えパターンA、Bでしょう。A、Bのような物件は昭和40年代以降にはほとんど 見られませんから、昭和30年代の公団マンションのような低・中層マンションの中から探し出すしかありません。こうしたマンションは環七以遠の郊外の団地 に見られます。

建て替えしやすい戸数規模としては、100戸~150戸までがひとつの目安といえます。これ以上多いと、所有者の意見をまとめることが困難になり、建て替えが進展しなくなるからです。

建て替え事例のほとんどが、等価交換方式です

今までに建て替えができているのは100事例程度ですが、ほとんどが不動産会社による等価交換方式です。これは、居住者が所有している土地を出資し て、その土地に不動産会社が建物を建設するというかたちで出資し、建物が完成した後に、居住者と不動産会社それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取 得する方式のことです。

この方式は、マンションの所有者は今と同じ規模の住戸を取得し、不動産会社は増えた分の住戸を販売して利益を得ることができるという双方が winwinの関係となることで、事業が成立するのです。逆に、増えた戸数の住戸が売りにくいエリアであったり、利益を得るための価格設定がしづらいエリ アであったりすると、容積率はクリアしても事業性が低いということで、不動産会社が二の足を踏むこともあります。

高齢な所有者が多いマンションの建て替えは難しい

前述の環七以遠という立地は、住宅需要の面からみて、必ずしも等価交換事業が成立するには良い立地とは限りません。なお、前ページの建て替えパターンAよりBのほうが、当然ながら、建て替えは難航します。

特に60代以上の高齢な所有者が多いマンションでは、難色を示す方が必ず現れます。自分の余命を考えると、500万円~1000万円の負担は重すぎ るという経済上の理由や高齢であるため、今、生活することが精いっぱいで工事中の一時引越しや、新しいマンションでの新生活には対応できないという心身面 での理由からです。こうした高齢者を無視しての建て替えは現実には難しいと思われます。

建て替えパターンCの場合は、理論上建て替えはできますが、2000万円程度の負担が必要なことから、Bと同様、高齢である所有者の反対や事業性が低いという面から等価交換をてがける事業者が手をあげないなどの理由などから、実現の可能性は高いとはいえません。

建て替えが可能かは、地域も影響してきます

港区などの都心部やターミナル駅近接の事務所化に有利な場所や容積率800%~900%の指定地区では再開発手法による共同建て替えの可能性は高いといえます。

一方で、世田谷区、豊島区といった住居系市街地のエリアでは、建て替えは進みにくいと思われます。世田谷区では地域住民や自治体の姿勢も高層化を歓迎していませんので、建て替えは進まないことが想像できます。このように、地域による違いも影響してくるでしょう。

建て替えがほとんど不可能と思われる既存不適格マンション。その理由をお話しします。

既存不適格マンションの建て替えはほとんど不可能、の理由

建て替えパターンDの既存不適格の場合は、今の戸数を下回る減築となるため、建て替えはほとんど不可能です。建築基準法などによる制限が新たに 施行されたり改正され、改正前の法令などには適合していたものの、新しい法令には適合しなくなった建築物のことを既存不適格といい、既存不適格マンション は1975年以前に建てられたマンションに多く見られます。

というのは、マンションはそもそも住居地域で20m、その他の地域で31mという絶対高さ制限が適用されていました。その後、1970年に全面採用 された容積率の既定により、それまで制限されていた高さの建物が建てられなくなりました。その後さらに、1976年に中高層の建物により生じる日影を一定 時間内に抑えることにより、周辺の居住環境を保護するために、中高層建築物の高さを制限する日影規制が条例で定められました。

したがって、このような規制が導入される前に建てられた築30年超のマンションの多くは、既存不適格物件となり、今と同じ規模の建て替えが難しいと されているのです。減築ではあるが地下も活用するなどして、なるだけもとの戸数に近づくように建築しようとすると、1戸あたり3000万円以上の費用負担 となり、経済的に対応できるのはごく限られた人たちということになります。

こうしたマンションは港区をはじめとした都心のマンションに多く見られます。そこで、隣接しあう老朽化したマンションをまとめて共同事業化したり、 東京都などの所有する公的な土地との一体開発など、機会と条件が整えば、建て替えの可能性が出てくる物件は好立地のマンションであれば出現する可能性は考 えられますが、稀なケースにとどまることになるのは否めないでしょう。

建て替えしやすいマンションを選ぶポイント

 以上のことから、建て替えしやすいマンションを選ぶとしたら、

・昭和30年代の環七以遠の団地タイプの4、5階建てのマンションで、容積率に余裕があり、建て替えると、2から3倍の住戸が確保できる。
ただし、需要の少ない立地では等価交換の事業は成立しにくいので要注意。

・1976年以降に建てられたマンションで、港区などの都心部やターミナル駅近接の事務所化に有利な場所や容積率800%~900%の指定地区では再開発手法による共同建て替えの可能性が高い物件。

といった条件で探すことになりますが、数は少なく、探すのにエネルギーがかかりそうです。では、建て替えできない場合、マンションの次なる打ち手はあるのでしょうか?

次回は、建て替えできないマンションの次なる打ち手についてお話しします。

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