- 2009年1月15日 17:01
- マンション選びの新基準
なぜ「点」より「面」なのか
同じ23区でも平均坪単価には2倍以上の開きがある
ひとつの不動産は「点」に過ぎません。その点が多数集まって「面」になるわけですが、その点の評価は点の集合体である面に規制されます。点がいくら優れていても、面の評価が低ければ点の評価は低くなり、反対に、点に多少の難点があっても、面の評価が高ければ、点の評価も高くなるものです。点のひとつの形態であるマンションも同様です。
マンションの資産価値は、物件そのものグレードなどにも多少影響されますが、それよりはどのエリアの、どんな場所にあるかという要素が重要というわけです。
たとえば、東京23区の各区をひとつの面としてとらえると、2008年に分譲された新築マンションの平均坪単価は図表1のようになっています。最も高かったのは千代田区の434.7万円でした。それに対して、一番坪単価が低いのは足立区の190.9万円。同じ23区といっても、平均坪単価には2倍以上の開きがあるわけです。
しかも、例年なら、千代田区より港区や渋谷区の坪単価が高いのです。実際、2007年の港区や渋谷区の平均坪単価は500万円台でした。それが、2008年の港区では格安で大規模な定期借地権マンションが分譲され、渋谷区では超高額物件の分譲が見送られ、コンパクトタイプのマンションが中心になった特殊事情がありました。このため平均坪単価が300万円前後にダウンしているのですが、そうした事情がなければ、この区による格差は3倍近いものになっていたかもしれません。
図表1 東京23区の新築マンション平均坪単価(2008年1月~11月)
千代田区 |
434.7万円 |
目黒区 |
417.4万円 |
江戸川区 |
210.0万円 |
中央区 |
309.3万円 |
世田谷区 |
327.2万円 |
中野区 |
295.6万円 |
港区 |
298.0万円 |
台東区 |
298.9万円 |
杉並区 |
365.8万円 |
渋谷区 |
336.7万円 |
荒川区 |
223.4万円 |
練馬区 |
286.4万円 |
新宿区 |
371.0万円 |
足立区 |
190.9万円 |
豊島区 |
328.5万円 |
文京区 |
354.7万円 |
葛飾区 |
216.8万円 |
北区 |
260.4万円 |
品川区 |
335.4万円 |
墨田区 |
280.4万円 |
板橋区 |
255.4万円 |
大田区 |
287.3万円 |
江東区 |
266.6万円 |
|
(東京カンテイ調べ)
坪単価の高いエリアほど資産価値を維持しやすい
これは、区単位の問題だけではなく、同じ最寄り駅単位、さらに同じ最寄り駅でも駅からの徒歩時間や、どういう地域にあるかということによっても違ってきます。
たとえば、JR京浜東北線の大森駅周辺で2008年に分譲された新築の例をみてみましょう。大森駅でも、山王エリアは早くからドイツ人外交官が居住し、ドイツ学園が設置され、ドイツ系の企業に勤務するドイツ人も多数住むようになりました。その後ドイツ学園は移転しましたが、いまもジャーマン通りという名称が残り、住宅地としての評価が高いエリアになっています。その山王エリアで分譲された物件の平均坪単価をみると、図表2にあるように280万円前後になっています。これに対して、南馬込は240万円台、中央は210万円台。南馬込も大田区のなかでは比較的早くから開発が進み、住宅地としての評価がそれなりに高いエリアですから、やや高くなっていますが、中央は徒歩時間が長いこともあって、大田区としては坪単価がかなり低くなっています。
この差は、購入後にもついて回ります。もともとの分譲単価の高いエリアほど資産価値を維持しやすく、単価の低いエリアほど維持しにくいのです。地価やマンション価格が上がるときには、分譲単価の高いエリアほど上昇率が大きくなり、下落時にも下がりにくいという特性があります。
ですから、資金に余裕のある人は、資産価値の高いエリアに物件を求める傾向がますます強くなります。逆に、資産価値の低いエリアに、本来資産価値の高いエリアで供給されるようなグレードの高い物件を供給しても、資金に余裕のある層は見向きもしないものです。あくまでも点ではなく、面が重要ということです。
図表2 JR京浜東北線大森駅の新築マンション坪単価例
徒歩時間 |
住所 |
平均専有面積 |
平均坪単価 |
13分 |
大田区南馬込 |
73.45㎡ |
243万円 |
18分 |
大田区中央 |
71.09㎡ |
210万円 |
6分 |
大田区山王 |
99.44㎡ |
287万円 |
9分 |
大田区山王 |
79.40㎡ |
278万円 |
(東京カンテイ調べ)
最初の選択が一生ついて回る可能性もある
この坪単価の差は、中古マンションとしての評価になったときでも必ずついて回ります。当初以上に評価の差が大きくなる可能性が高いと考えられます。最初の選択に成功すれば、売却するときに有利になり、住まいのステップアップを図りやすくなります。しかし、失敗すると、想定した価格では売れずに、ジリ貧になってしまうかもしれません。つまり、最初の選択の成否が一生ついて回る可能性が高いわけです。
これは、マンションの居住性とは関係ありません。マンションごとの評価による差が多少は出るにしても、それよりはエリア、立地による影響が大きいことは間違いありません。
それだけに最初の選択が極めて重要になってくるのですが、実際のところ、この評価の差はどのような要因から生じるのでしょうか。
次回からは、具体的にマンションのエリア選択、立地選びの基準となる視点についてみていくことにしましょう。
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