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入居済みマンションで感じた、「共に住むマナー」

先日取材したマンションで見た光景です。

その日はでした。

すでに完成し、入居者も住み始めたマンションのとあるフロアへ来た時、廊下の突き当たりの住戸の玄関ドアの前に、濡れた長靴が2足と開いた傘が置いてありました。
 案内をしていただいた販売担当者に「これはいいのですか」と尋ねたところ、少々困った顔で「管理のほうからそっと注意はしています」との返事。

 この光景を見て、私は2つのことを思いました。

 ひとつは「共同住宅に住むマナー」の問題。
 そのマンションは上階に億単位の住戸もある、いわゆる高級マンションです。玄関内部の床は廊下と段差がなく白い大き目のタイルが張られ、玄関ドアの横にはシューズインクロークが続いています。本来であれば、濡れた長靴と傘はシューズインクロークに入れるか、もしくは広く、庇のついたバルコニーに置くのがルールでしょう。しかしながらそこの居住者はせっかくの真新しい床と壁が汚れるのがいやだったのか、玄関前の廊下に堂々と干したわけです。
 自分のところがきれいに保てれば、目のつかないところの美観はどうでもいいという身勝手な発想。マンションの廊下はたとえ突き当たりの住戸で使うのは自分の家族だけでも、マンション全体の共有部分にあたります。美観だけでなく、いざというときは重要な避難経路にもなるため、物を置くことは禁止されている空間です。そのあたりの認識は「共同住宅に住むマナー」の意識の問題とともに、入居時の説明会できっちりと伝えておく必要性があることでしょう。

 ふたつめは設計者の立場から思ったこと。
 このマンションのように、玄関たたきと廊下の床面との段差がないケースも増えてきました。土の道路が都市から消え、バリアフリーがうたわれている昨今の傾向から考えても、方法としては一案だと思います、しかし日本は高温多湿で雨の多い風土。濡れたものを心おきなく置ける場所は日常生活を始めると欲しくなるスペースです。設計の段階で傘はここ、と想定しても実生活とのギャップが生じてきてしまうのです。

 マンションは限られた床面積の中で、採算も合うようにプランをしなくてはなりません。本来は欲しい収納や納戸、サービスバルコニーなどのスペースは必要最低限の確保ですますか、もしくは排除されがちな空間です。しかし美しく住むためには、一時的なもの、汚れたものを置くスペースも必要です。表と裏の空間は生活をするためには必要なのです。

 いかに裏のスペースを限られた与条件の中で生み出すか。マンションの空間はここ数年で美しさや快適さでさまざまなアイデアを取り入れていますが、まだまだ考えるところはあると感じた1日でした。

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