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不動産会社の儲けの仕組み3 お金の流れ

マンション事業のお金の流れ
マンション事業は、下記の表の〈1~8〉のような流れで行われます。その流れにしたがって、マンションデベロッパーは、まず〈1〉・〈2〉事業に必要な用地所得のために、土地代金を銀行から借り、用地を仲介した不動産会社へ手数料を支払います。また、〈4〉建設会社への工事費も工事着手時に一時金を銀行から借り入れて支払います。
そして、〈5〉購入者から受け取った物件価格の20パーセントの代金を、〈6〉マンションが完成したら工事費の残金にあてます。〈7〉・〈8〉で契約住戸に対して購入者から支払われる代金は、銀行への利息、元本の返済にあてられ、手元に残ったお金がマンション事業の粗利となるわけです。
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マンションは青田売りでないと資金繰りがうまくいかない
このようなお金の流れを見ていくと、他の多くの商品と異なり、マンションが完成前に売られる、いわゆる青田売りにならざるを得ない理由が分ります。
つまりマンションの完成後に、建設資金の支払いや用地資金の元本を返済するには、予め、購入者から物件代金を回収しておかなければ、支払いができない、というデベロッパー側の事情によるものなのです。 買う側にとってみれば完成後に実物を自分の目で確かめて買いたいところですが、売れ残りではなく新規販売時に、そのような販売手法がとれる、自己資金が潤沢なデベロッパーはほとんど存在しないのです。 次に、さらに深くお金の流れを見ていきましょう。
完売までの時間が長期化すればするほど、利益は減少する
そして、前頁の表〈5〉~〈7〉で青田売りが始まり、建物が完成するまでの期間に、総戸数の8割まで契約が進んでいれば、マンションの原価分の資金回収には目途がたちます。(儲けの仕組み1を参照)銀行への借り入れも、この段階で完済できれば、その後に売れた住戸の代金が粗利に計上できるわけです。このような流れで全住戸が完売するのが、建物完成後1年以内であれば、まずまずの販売成績というのが、業界の常識です
。 ところが、これまた、先のリーマンショックのように不動産不況に見舞われると、完売するまでに完成後2年かかるなどということは珍しくありません。完売までの期間が長ければ、販売事務所の経費や販売担当者の人件費が嵩んでいき、利益を圧迫します。 しかも、不況期には需要減、供給過多により、相場価格は時間の経過とともに、下がってきます。そうなると、既に販売中の物件はあとから販売される新規物件に比べて、割高感が強く、更に売れない状況に陥ってしまいます。こうした悪循環を断ち切りできるだけ早い時期に完売するために、水面下の相対で「○月までにお決めいただければ」と値引きや無料オプションが始まります。
不況期に完成までの契約住戸が少ないと黒字倒産が起きる
2008年秋に起きたリーマンショックで、中堅のマンションデベロッパーが何社も倒産したり、倒産には至らないまでも、銀行管理下で企業再生というケースが少なからず発生したことは記憶に新しいことです。
こうした事態が生じるのは、〈5〉の青田売りの期間に契約できた住戸が売れ行き不振で少なく、〈6〉.〈7〉で発生する支払いに必要な資金の回収ができず、資金ショートが起こるのが原因です。時間は少しかかるものの、最終的に完売し、事業収支は黒字になる見込みがたっていたとしても建物完成後の支払いのためのキャッシュフローが滞ると、黒字倒産という事態に追い込まれてしまうのです。 まず借金して事業を始め、住戸を青田で売って資金を回収して、完成後に借金を返済するというお金の流れを前提としたマンション特有のビジネススキームは、売れ行き不振でお金の流れが一旦止まってしまうと、黒字でも倒産という事態は避けられないのです。 また、他に賃貸やオフィス、商業施設などの事業を複合的に営んでいれば、他の事業から資金を融通する道もありますが、マンション専業のデベロッパーは、マンション市場全体が不況に陥ると、リスクヘッジする手段が他にないために、倒産は避けられないのです。過去にさかのぼると、だいたい7年おきに不況の波が訪れ、マンション専業のデベロッパーの倒産が新聞を賑わすことになります。 お金の流れをつかむことでわかるお得な販売時期をお知らせしましょう。
値下げ販売のタイミングは不況になった翌年度の決算前
このように、黒字倒産とまではいかないまでも、不動産不況期には、需要減、供給過多により、住宅価格の下落が進みます。販売が長期化すればするほど、既に販売している物件については割高感がでてきて商品価値が落ちてくるため、思い切って値引き販売でできるだけ早期完売をめざさなければ事業は大赤字になってしまう懸念が出てきます。
そうすると、前述のような水面下で、個別にダンピング販売する程度では、売れ行きのスピードが遅いため、「一斉値下げ販売!」と銘打って、チラシや新聞広告で、値下げを告知し、大量集客、早期完売を企図するデベロッパーが現れます。 この場合、だいたい値引き幅は2~3割程度になります。このマスメディア告知により値引き販売をする際には、既に値引き前の価格で契約した購入者に対しても後追いで値引きを実施することになります。こうして、銀行や建設会社への支払いを滞らせないため、また赤字幅を可能な限り低く抑えるために、見切り値下げが始まるのです。その時期は概ね決算時期である3月を控えた1月後半から2月にかけて見られる減少です。
お金での流れをつかむことでできる有利な交渉
このように、お金の流れをつかむことで、マンションデベロッパーが、現在どのような状況にあるのか、そのために販売上どのような対処をしようとしているのか、が分ってきます。そうすれば、あなたは、マンションデベロッパーの出方を先読みしながら、余裕を持って有利なポジションで、交渉ができるようになってくるのです。
それでは、更にマンションデベロッパーのビジネススキームを深掘りして、次回はより詳細な「マンション販売の流れ」について、次々回では「物件の値付けの仕方」についてご説明します。マンション事業の仕組みがここまで分れば、あなたは最強の消費者になれるはずです。

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