「グロブナープレイス神園町」を見てきました。

2008.11.29 at 11:11 am by

 イギリスの不動産会社として300年の歴史を持つグロブナー社が、東京建物株式会社と株式会社プロパストとの提携により代々木公園隣接地に開発した高級外国人向け賃貸マンション「グロブナープレイス神園町」を見てきました。

 分譲ではなく賃貸のみで、かつメインターゲットは外国からの赴任者ということで、直接私たちとは関連しない建物といえますが、デザインコンセプトのひとつに日本と英国文化の融合をあげ、品質の良い材料を使った空間づくりをめざしているということで、その視点でお伝えしたいと思います。

 場所は小田急線「代々木八幡」「代々木公園」または「参宮橋」駅から徒歩7~8分の井の頭通りに面しています。

 ちょうど代々木公園の青少年オリンピックセンターの隣でマンション周辺は公園の緑に囲まれた絶好の場所です。元オリンピック記念公園のグラウンドがあった場所でさらにその前はGHQの高級官僚住宅「ワシントンハイツ」が建っていました。昔から外国と縁の深い場所だったということでしょうか。そこに今年の10月完成したのが「グロブナープレイス神園町」です。地上5階建て、総戸数45戸、専有面積が1住戸あたり154.14m2~363.95m2と実にゆったりとした空間です(ちなみに賃料は坪27000円ほど。計算してみてください)。施工は鹿島建設。デザイン監修はイギリスの建築家ポール・デイビス&パートナーズで、設計は日本の安井建築設計事務所が担当しました。

 日本と英国の文化がどのように融合しているのか。2社の担当代表の方のお話をまとめると、建物のデザインや材料は日本的なもの、そして住戸のプランニングや設備機器の考え方などは英国のライフスタイルを基本としているということです。具体的には日本的なアプローチとしては装飾を極力抑え、外観、内部ともに直線と平らな面で空間を構成し、アクセントに格子を使用しているということ。そして内部の仕上げ材料はオーク材など天然木と大理石が中心になっています。コンシェルジェが迎えるエントランスとトップライトからの光が入る長いコリドー(中廊下)、そして中央の吹き抜け空間を囲むようにある共有廊下の床や壁がこの2つの材料でたくみに構成されています。住戸内の床もオーク材のフローリングと大理石、ドアや収納の扉も木製で天井の高さまであり木質の壁のように見せています。他の壁はクロス張りですが、これは賃貸ということで張替えを想定しているということでしょうか。全体に形状はシンプルでも素材に本物を使うことで豊穣な空間を生み出すことをねらっているようです。

 一方プランニングは外国の方が住むことを前提にしたつくりです。建物全体の構成は中層の高さではめずらしい東西南北に住戸があること。これは周辺が代々木公園の緑で囲まれている環境もありますが、日本人ほど南の日照にこだわらない外国の方向けのマンションであることも要因かもしれません。内部に眼を向けると、とにかく広い玄関の床は大理石で途中からフローリングになっています。もちろん段差はなく、一応靴は脱ぐですが、脱ぐ場所はスリッパの置いてあるところ、と流動的。シューズクロークも玄関ドアから離れていて、一体どうやって動けばいいのと頭の中で思わずシュミレーションをしてしまうほど。キッチンもシンクとガス台は別のカウンターになっていてその距離も結構あります。聞けばこのクラスの居住者だとメイドさんやシェフが使うことを想定しているとのこと。納得しました。主寝室には専用のパウダールームとバスルーム、そしてまさしく文字通りの奥深いウォークインクローゼット。その広い主寝室に対し子供室はわりと小さめなのも夫婦が主体となる外国の家族を思わせるつくりです。またトイレと思って開けたところがスロップシンクのついた独立した洗濯室というのもおもしろいところです。そして1階と5階はメゾネットになっていてメインの玄関フロアにはリビングなどパブリックゾーン。サブエントランスのあるフロアはプライベートゾーンとはっきり分かれているのも特徴です。

 外観の仕上げは1階部分がベージュ系のさび石、2階から4階までが茶系のボーダータイル、5階が白っぽいライムストーンと3層になっています。この手法はイギリスの伝統的手法とか。地面から中間の緑、そして上空の空と、それぞれの高さにある自然との調和を図っているこの手法は参考になりました。

 公園の紅葉がピクチャーウィンドーの窓からまんべんなく室内に入る贅沢な空間にしばし浸った秋の一日でした。

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