マンション選びは「点」より「面」 第2回

2009.2.19 at 10:02 am by

高額所得者の住むエリアほど資産価値は高い

東京23区では区によって年間所得に3倍近い差

マンションの資産価値は、立地に大きく左右されます。そのエリア探しの参考になるのが、エリア別の平均所得。お金持ちがたくさん住み、平均所得の高いエリアほど物件価格が高く、資産価値も高いのです。

各都道府県の年間所得を比較すると東京都がトップで、最下位の沖縄県とは2倍ほどの差がありますが、トップの東京都でも市区町村によって大きな所得格差があります。なかでも、一番特徴的なのは23区でしょう。下の一覧表を見れば分かるように、トップの港区は平均所得が1000万円を超えていますが、最下位の足立区は338万円で、その差は3倍近くに達します。

年間所得の上位5区をみると、いずれも丸の内、大手町、六本木などのビジネス拠点に隣接しながら、昔から高級住宅地として知られるエリアが点在する区であり、お金持ちが職住近接の邸宅を構えてきたエリアということができます。近年では、こうしたエリアにも高額のマンションが建設され、何代にもわたって居住し、資産も豊かな“リアルリッチ”だけではなく、“ニューリッチ”も住むようになっています。そうしたニューリッチ層のなかには、あえて持ち家としての分譲マンションではなく、高級賃貸に居住する人たちも少なくありません。

お金持ちが住むエリアには、お金持ちを中心とした独自のコミュニティーが形成されています。そうしたコミュニティーに加わるためには、ニューリッチ層もそのエリアに住む必要があり、それが高額マンションや高級賃貸へのニーズを生み出し、その根強いニーズがエリアの資産価値を高めるという構図です。

金持ちが集まる街ほど資産価値を維持しやすい

ですから、どんな人たちが住んでいるエリアであるかは、そのエリアの地価や住宅価格に影響してきます。

実際、中古マンションの平均坪単価をみると、23区のトップ、ということはつまり日本で一番坪単価の高いエリアは千代田区になっています。以下、港区、渋谷区、目黒区、中央区の順で、平均所得の高い区ほど平均坪単価が高いことが一目瞭然です。平均所得ベスト5のうち、文京区だけ平均坪単価では9位に落ちていますが、平均坪単価ベスト5のうち4区までは平均所得のベスト5と一致しているのです。

反対に、平均所得の低い区をみると、19位以下のワースト5の各区は、平均坪単価のランキングでも、やはり17位以下にとどまっています。また、10位から14位までの平均所得中位群をみても、平均坪単価は7位から18位までの間に分布しています。所得の中位群は、平均坪単価でもやはり中位クラスにとどまるケースが多いわけです。

過去の平均坪単価の動きをみても、上位群の各区ほど上昇率が高くなっています。東京カンテイの調べによると、平均坪単価でベスト5に入っている千代田区、港区、渋谷区、中央区の各区は、バブル後の最安値から2008年には40%以上高くなっています。反対に、下位の各区では10%以下の上昇にとどまる区が大半を占めます。つまり、相場自体、お金持ちの住むエリアが高いと同時に、資産価値の維持という点からもお金持ちが集まるエリアのほうが有利という見方ができそうです。

平均所得に比べて坪単価の低いエリアが狙い目?

しかし、なかには平均所得に比べて、平均坪単価のランキングがかなり低くなっている区もあります。平均所得上位群では、文京区がその代表格。平均所得では4位ですが、平均坪単価は9位にとどまります。エリアの居住層に比べて、マンションの評価が低いレベルにとどまっているという見方ができます。平均所得からみれば、もう少し評価が高くてもいいかもしれません。

同様に、平均所得中位群では、大田区、練馬区の平均坪単価がかなり低いレベルにあることが分かります。もちろん、ひとくちに大田区といっても田園調布から湾岸の工場地帯までいろいろですから、この格差も致し方ないことでしょうが、全般的にみれば、もう少し上位に上がってもいいのではないでしょうか。

23区に限らず、マンションの購入エリアを考えるときには、こうしたエリアの平均所得と平均坪単価をはかりにかけてみるのも、選択基準のひとつになるのではないでしょうか。

図表 東京23区の平均所得と平均坪単価ランキング

平均所得 平均坪単価
1 港区 1007 1 千代田区 345.3
2 千代田区 821 2 港区 334.4
3 渋谷区 734 3 渋谷区 316.1
4 文京区 577 4 目黒区 254.7
5 目黒区 576 5 中央区 252.4
6 中央区 576 6 新宿区 235.2
7 世田谷区 535 7 品川区 221.8
8 新宿区 510 8 世田谷区 213.6
9 杉並区 508 9 文京区 219.1
10 品川区 435 10 豊島区 203.7
11 大田区 435 11 杉並区 197.4
12 練馬区 421 12 中野区 193
13 豊島区 416 13 台東区 180.7
14 中野区 411 14 大田区 180.4
15 台東区 407 15 江東区 176.6
16 江東区 386 16 墨田区 163.7
17 板橋区 376 17 北区 159.1
18 江戸川区 364 18 練馬区 155.9
19 墨田区 358 19 荒川区 148.7
20 北区 357 20 江戸川区 139.6
21 荒川区 351 21 板橋区 155.9
22 葛飾区 345 22 葛飾区 119.5
23 足立区 338 23 足立区 111.1

(資料・平均所得は総務省『市町村別課税状況等調』より作成、平均坪単価は東京カンテイ調べ)
赤は平均所得上位5区
黄は平均所得中位5区
青は平均所得下位5区

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