築30年超のマンションの住み心地体験談

2010.2.2 at 08:02 am by
築年数の古いマンションに暮らしていると、新築当時の植栽が育ち、緑豊かな敷地内庭園が楽しめたり、何によらず、おっとり造られた空間にゆとりを感じたりするのは、とても豊かな気持ちになります。半面周辺の住環境が再開発により激変したり、思いもかけない構造上のトラブルに遭遇したりします。そこで、古いマンションならではの住み心地について体験したことを、お知らせしましょう。

「水漏れ」は築古マンションみんなの悩み

築20年を超えるマンションの多くが水漏れに悩んでいるという実態があります。私が住むマンションもご多分にもれず、水漏れが発生しました。原因は大きくは2つです。

1つは排水管の劣化です。古くなった排水管の一部に穴が開き、そこから漏れた水が居室内に浸透し一時生活ができなくなるというものです。上層階より低層階で起こる確率が高く、2から3階の住戸の中には一度ならず二度、三度水攻めにあうところがあり、とてもお気の毒でした。

こうした状況をうけ、管理組合の理事会から、排水管の取り換え工事あるいは、排水管のコーティング工事(穴をふさぐため)の提案がなされましたが、この提案の決議はもつれにもつれ、提案から工事実施までには2年もの時間がかかりました。

なぜ、時間がかかったのか。まず、取り換えかコーティングかの工事の内容を決めることでもめました。古いマンションならではのことですが、躯体内に配管が埋め込まれた構造のため、取り換えの工事期間中は1週間程度仮住まいが必要な大掛かりのもので、コストも相当かかります。ただし、取り換えれば抜本対策を講じたことにより、数十年間は水漏れなしの状態が可能です。

一方、コーティングは住みながら工事ができます。コストもかかりません。ただし、10年程度しか効果は望めません。私の住むマンションは高齢の方が多く、なかには健康上の不安を抱える方もいらっしゃいました。そうした方々にとっては大掛かりな工事への対応は難しいため反対が多く、結局、コーティングにするという決定となりました。この決定までに1年間かかりました。

また、工事を発注する業者選定にも時間がかかり、工事完了まで、2年間もの時間がかかりました。水漏れ被害に複数回あった住戸の方は工事完了を待たずに転居してしまわれたようです。コーティング工事後、水漏れ騒ぎはなくなりました。

もう一つは屋上や駐車場の防水性能が低下して起こる水漏れです。これは面積が広く、どの個所からの漏水かを特定するのに相当の工期とコストがかかっていました。またたとえ一時期特定できて改修工事ができたとしても、その後も異なる箇所から時折水漏れするようで、こちらのほうは粘り強い対処療法が講じられています。直接住戸に浸水するものではないため、対処療法でも生活上の支障はあまりありません。これは建て替えなどの抜本対策が講じられない限り、その都度対処療法を行うしかありません。

超築古マンションともなると、使われている建材や設備が大きく異なります。次に、今の新築マンションとの、室内住居の違いをお話しします。

窓・天井高、柱・梁は今風のものとは異なります

今は高さが2mを超えるハイサッシの窓が主流ですが、昔のマンションは1.8~1.9m程度です。ガラスも薄くて、遮音性、断熱性ともに低いことは認めざるを得ません。車の騒音は結構聞こえますし、冬は寒いです。でも窓は共有部分なので勝手に変えられません。管理組合の許可が必要です。そのためには、管理組合は、あらかじめ新しく交換する窓枠の素材・色などのルール設定をしておく必要があります。

私が入居した当時はそうしたルールはなく、私の申し出を受けた理事会が速やかに対応してくれました。築30年超のマンションであれば、どこにも起こりうることでしょう。

天井高が低いのも特徴のひとつでしょう。今はリビングの天井高が2.6m程度は珍しくありませんが、昔のマンションはせいぜい2.4mです。また、柱や梁も室内に多数張り出していますので、空間の伸びやかさやすっきりとした開放感は、残念ながら今ひとつですが、落ち着く空間でもあります。

冷暖房が全館セントラルヒーティングといういまどき珍しいシステム

冷暖房は個別ではなく全館セントラル方式です。戦後の日本人は、米国人が真冬に室内で半そでのTシャツ姿で生活するのを見て、その豊かさにびっくりしたといいますが、まさにそれと同じ方式です。

冷暖房用の配管が全住戸に張り巡らされていて、冬は地下のボイラー室で温められたお湯による暖房、夏は屋上のスプリンクラーを通した大量の水による冷房です。どちらもより自然な形で熱が伝わるので、一般的な個別冷暖房より快適度は高いものがありましたが、徐々に配管が老朽化し、冷房が効きにくい住戸が発生したり水漏れの原因になったりして、個別冷暖房への切り替えが始まりました。

省エネルギーやコストのことを考えると個別方式でしょうが、あの快適さは捨てがたいものがあります。とはいえ、もうセントラル方式のマンションはごくわずかです。完全消滅も時間の問題でしょう。

では、住んでいるうちにバージョンアップされ、より快適になったところをお話しします。

植栽、エントランス、エレベーターのリニューアルで若返り

住んでいるうちにバージョンアップされ、より快適になったところも多々あります。入居する数年前に給水管更新や外壁補修などの大規模修繕は終了していましたが、入居後相次いで追加の工事が実施されました。

柘植を中心としたエントランス周辺の植栽がトネリコを中心としたものにリニューアルされ、とてもおしゃれな雰囲気になりました。次いでエントランス、エレベーターホールのリニューアルがなされマンションの顔となる部分がずいぶん若返りしました。その後新しいエレベーター昇降機に交換され、建物が一気にバリューアップしました。

これができたのは、数億円の修繕積立金があったからです。超築古マンションを買う判断をする上で、毎月の管理費・修繕積立金の額や修繕積立金の残高は重要なポイントだと考えます。

実際、バリューアップ後のタイミングを睨んで売り出された住戸がありましたが、確実にバリューアップ前より市況が良かったせいもありますが、販売坪単価はアップしていました。

再開発で住環境は激変!

私の住むマンションは古い一戸建てが混在する住宅地にありました。その古い一戸建てやアパートが地上げされ、目の前に超高層マンションが建ったのです。それまで見えていた国会議事堂は見えなくなり、日照時間も減少しました。ビル風も強くなり、居住性が低下した点もあります。

一方で、前面道路が整備されるとともに、歩道も新たに設けられ、安全性が格段に増しました。超高層マンションが提供する公開空地には、桜が多数植えられ街並み景観は明らかに美しくなりました。結果としては、プラス、マイナス、ゼロもしくは、幾分プラスというのが、この再開発に対する私の勝手な評価です。

また、この先、私が住むマンションやその周辺にある空地が一体開発される可能性もなきにしもあらず、です。好立地の土地は利用価値が高いので、古くなって住めなくなった後に、周辺と一体となった再開発の可能性が残されています。実現までには時間がかかることではありますが、資産価値は生き続けます。

コメントを投稿

,