人生100年時代に対応する「長期優良住宅」

2009.9.5 at 03:09 pm by

マンションのメリットは数多くありますが、マンションを持つリスクがあることも理解しておくべきでしょう。人生90年いや100年ともいわれる時代です。私たちはいったん取得したマンションに場合によっては60年、70年もの間住み続けることも考えられます。
そこで今回は、マンションが古くなることで生じてくるリスクと、それに対応したマンションをご紹介しましょう。
マンションを持つことの「リスク」

共同で住戸を建設するマンションには、一戸建てに比べて下記のメリットがあります。

・立地条件の良い便利なところに、取得価格を安くして手に入れることができる
・共用施設やセキュリティ施設が充実している
・戸じまりが簡単で外出しやすい
・火事・地震に強いなど

半面、以下のようにマンションを持つリスクもあります。

・単独では意思決定ができない
……マンションには複数の区分所有者が存在し、植木を切ろう、玄関の照明を明るいものにしよう、オートロックをシングルからトリプルに変えようといったことは、一戸建てであれば所有者の自由にできますが、マンションでは過半数の合意がなければ実施することはできません。

・管理組合活動の難しさ
……マンションは区分所有者が管理組合を結成し、維持・管理についての意思決定を行います。しかしながら管理組合も理事会も管理の専門家ではないし、関心の低い区分所有者も多く、維持・管理活動が停滞し、マンションが老朽化し資産価値の低下につながるリスクがあります。

・修繕積立金の不足や管理費の滞納
・瑕疵等の問題
・被災した場合
・修繕・改修の実施
……建てた当時最先端の技術を駆使したマンションであったのに、いつしか老朽化し、居住者のニーズにもマッチしなくなってしまう。そのため修繕や改修を実施する必要があるが、エレベーターの増設など、「形状または効用の著しい変更」については3/4以上の賛成が必要となります。エレベーターは中高層の住戸にはメリットがありますが、1・2階の住戸ではメリットが少ないため、賛同が得にくい場合も多く、改修工事の実現までには相当の時間とエネルギーが必要となります。

・建て替え
……老朽化が進んだ場合の最終的な解決策は、建て替えということになります。しかし建て替えの決議には4/5以上の賛成が必要ですが、建て替え費用、2度の引越費用、仮住居の費用も負担となり、合意形成が難しいのが現実です。全国で建て替え事例が129件にとどまっていることが、その難しさを端的に表しています。

マンションを買って住んだ後、老朽化による資産価値の低下を抑えるために大規模な修繕などを行うには、自分ひとりではなく管理組合を通して、区分所有者の合意を得ることが必要です。そのためには、そもそも資産価値を維持しやすい造りになっているか、高度な維持・管理の仕組みが最初から組み込まれているかが、合意の得やすさからみて極めて重要なポイントになります。

では、リスクを解消し将来価値の維持に大きな威力を発揮しそうな長期優良マンションの概要をご説明します。

長期優良マンションとは?

マンションのリスクを解消し将来価値の維持に大きな威力を発揮しそうなマンションが6月4日の「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の施行により、今後登場してくることが期待されます。この法律は以下の認定基準をクリアしたマンションについて、国が「長期優良住宅」というお墨付きを与えてくれるというものです。

基準自体は専門的で一般の人には、分かりにくいかもしれませんが、ひとことで言えば、長い目で見て住みやすいマンションの要件を設定したものとご理解ください。これらの要件をクリアしたマンションであれば、100年超程度は安心して住める、丈夫で長持ちする、というものです。

100年超安心ということは、たとえ建て替えられなくても、生きている間は十分に住めるということですし、築年数が古くなっても、何かの都合で人に貸したり売却する際にも、価値の低下が少ない分高い家賃、高い売却価格での取引ができるということになります。

長期優良住宅の認定基準

長期期優良住宅の認定基準は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく日本住宅性能表示基準の等級+αで定められています。

性能項目 マンション業界の標準 長期優良住宅認定基準
構造躯体等の劣化対策 等級3 劣化対策等級3に加えて次のいずれか
・水セメント比45%以下とする
・水セメント比を50%以下とし、かつかぶり厚を1cm増やす
耐震性 等級1 以下のいずれかとする
・評価方法基準に定める免震建築物であること
・耐震等級(倒壊等防止)の等級2又は3
維持管理・更新の容易性 専有:等級2
共用:等級2
維持管理対策等級(専用配管・共用拝観)等級3
更新対策等級(共用排水管)等級3
専有部に立ち入らず、共用配管を維持管理することができる
可変性   躯体天井高 2,650mm以上
バリアフリー性 専有:等級1
共用:等級1
高齢者等対策等級3(共用部分)
ただし、手すり・段差については対象とはしない
省エネルギー性 等級3 省エネルギー対策等級4
住環境   地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域ないにある場合にはこれらの内容と調和がとれていること
住戸面積   55m2以上(2人世帯の都市居住型誘導居住面積水準)
*地域の実情に応じて下限の40m2まで引き下げ可能(1人世帯の誘導居住面積水準)
維持保全計画   定期点検については少なくとも10年ごとに点検を実施するなど

 

では、長期優良住宅を買うメリットのひとつである、知っていると得をする税金やローン優遇についてお話しします。

長期優良住宅を買うときのメリット

100年もつマンションですから、相当堅牢な建物ということになります。それゆえに一戸あたり約200万円ほど建築費がアップすると言われています。高いマンションは二の足を踏むという方々のために、長期優良住宅を買うと、いろいろな特典が整備されています。国が相当力を入れていることが、このような制度の充実を見ても分かります。

【税金】
・住宅ローン減税の引き下げ
控除率:一般住宅1.0% → 長期優良住宅1.2%
最大控除額:一般住宅500万円 → 長期優良住宅600万円

・登録免許税の引き下げ
住宅用家屋の所有権保存登記の税率:一般住宅0.15%→長期優良住宅0.1%

・不動産取得税
課税標準からの控除額:一般住宅1200万円→長期優良住宅1300万円

・固定資産税
減額措置の適用期安を延長:一般住宅5年間1/2→長期優良住宅7年間1/2

これらの税制優遇を利用して、長期優良住宅認定の4000万円のマンションを年収700万円の世帯が購入すると、同額の一般的なマンションを購入した世帯にくらべ、約44万円、税金が少なくなります。

【ローン】
・フラット50
……住宅金融支援機構が、認定長期優良住宅について最長50年の住宅ローンを、民間金融機関を通じて販売する
・フラット35S
……住宅金融支援機構が認定基準に適合する住宅を対象に0.3%の金利引き下げを当初10年間。フラット35S(20年タイプ)の場合は0.3%の金利引き下げを当初20年間

最後にいち早く登場した長期優良マンションをご紹介します。

いち早く登場した長期優良マンション
「ザ・ライオンズたまプラーザ 美しが丘」

長期優良住宅に認定されたマンションって、どんなマンションか気になることかと思います。いち早く登場した長期優良マンションをご紹介しましょう。
ザ・ライオンズ たまプラーザ美しが丘

ザ・ライオンズ たまプラーザ美しが丘

ザ・ライオンズ たまプラーザ美しが丘
総戸数39戸、売主は大京、竣工予定日は平成22年3月15日です。このマンションは、200年を見据えたコンクリートの採用、耐震等級2、将来の変化に対応しておおがかりな間取り変更ができるスケルトン・インフィル工法など丈夫で長持ちかつ変化に柔軟に対応できる建物となっています。

また、グリーンカーテン・シェードの設置・可変式ブラインド・夜間冷気導入、ミスト散布などのパッシブ主体の環境コントロールで省エネ効果をたかめています。共用部の照明のLED化、一部の雨水を外構植栽の散水に再利用、次世代モータリゼーション対応型機械式駐車場なども設けられています。

「50年周期の長期修繕計画」の作成・実行提案がなされ、長期にわたり資産価値が維持される仕組みづくりとして5年ごとの定期点検サービスを実施し、修繕・更新・交換履歴(専有部も)を記録した住宅履歴書を整備します。この仕組みがあれば、管理組合の活動が必ずしも活発でなくとも、維持・管理機能は発揮できるでしょう。また、大規模修繕内容に反対の人も、新築入居時から50年の修繕計画が提案されていれば、後のち、改めて反対することはなかなかできそうにありません。

さらに、売却時には、「仲介手数料優遇制度」や「特別買取保証制度」「売り主の瑕疵担保責任免除」など古くなっても資産価値の下がらないマンションとして、中古として取引する時点でも各種の優遇制度が設けられています。長い目でみて居住性の高いマンションは資産価値も高いとして有利な取引条件で、中古売買ができるとすれば、200万円高くとも将来性を買うという視点で納得できそうです。

これらの制度は、売主である大京だけではなく、管理を担当する大京アステージ、中古マンション売買の仲介を担当する大京リアルドなど企業グループによるトータルのサポートシステムが整備されてはじめて実現することだと思われます。

私が企画運営する「マンション評価ナビ」は長い目でみて居住性の高いマンションかどうかが分かる調査項目、評価基準で東京23区の中古・新築の優良マンションを紹介しています。こちらも併せてご覧いただくと、将来価値の下がりにくい100年対応マンションの傾向がつかめます。

人生100年になろうとする時代です。長い目でみて、安全・安心なマンションを選ぶことが、マンションを持つリスクを解消する有効な対策のひとつ、ということになるのではないでしょうか。

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